財団法人 科学技術振興育英財団

代表 久米正一 ごあいさつ

未来に夢を創る 赤ちゃん・子ども達(第0次産業)

家庭の茶の間のテレビから豊かなニッポン、平和なニッポンが映し出されています。それは「グローバル」「競争」「成長」の自由経済において、欧米が追及するブランド、ステータス等、きらびやかな拝金、拝物の勝ち組社会の理想像でもあります。それを否定するつもりはありません。

しかし、一方で「グローバル」「競争」「成長」に参加できない人や無関係な人がいます。特に、赤ちゃん、子ども、そして、多くの高齢者達です。若い大人達は「グローバル」「競争」、そして、「成長」の社会に力強く参加できても、赤ちゃん・子どもは、直接参加できません。大人の社会が重要視するブランド、ステータス等の豊かなニッポンの勝ち組への競争社会等は、もしかすると、赤ちゃん・子どものこころを育む「未来の夢」ではないのかもしれません。

平成26年7月15日に発表された厚生労働省の資料※1によれば「子どもの貧困率」は、16.3%、即ち、子どもの6人に1人(約325万人)が貧困という実態は年々深刻化しているといいます。「朝夕の食事」すら摂れなくて、「学校給食」が「1日の唯一の食事」という子どもも多いと聞きます。まさに「子ども貧困大国」です。これが世界に誇る「経済大国の子どもの育英」の現状です。

一方、平成28年4月25日に発表された内閣府※2の資料によれば「赤ちゃん(0歳から3歳未満)が受けた虐待」は、17,479(人)件です。更に、3歳から未就学の子どもを加えると、合計約4万(人)件となります。これもまた、膨大な赤ちゃん・子どもの虐待です。この内、0歳から3歳までの赤ちゃんの「虐待殺人」は、平成26年度で「約40人」※3、即ち、10日に1(人)件の赤ちゃんが「虐待殺」されています。これは「赤ちゃん虐待大国」です。これが世界に誇る「先進国G7のメンバーの赤ちゃんの保育」の現状なのです。

「世界に誇る経済大国」、「世界に誇る先進国」である「ニッポン」が「ニッポン」の「おもてなし」で「世界に誇るオリンピック」を開催しようとしています。それはそれで、素晴らしい。多くの子どもが楽しく参加します。

しかし、「6人に1人が、朝夕の食事も、まともに摂れない子どもにとって、オリンピックへのおもてなしの参加」は?「虐待を受けている赤ちゃんのオリンピックへのおもてなしの参加」は?ニッポンは「赤ちゃん・子どもの虐待と貧困」を「置き去り」にしてはいないでしょうか。

まず、きらびやかな新国立競技場における開会式典を創意する前に未来に夢を創る子どもの「貧困・虐待」を「赤ちゃん・子どものおもてなし」に改革することが「先決」です。

高いGNPの国でその豊かな経済の恩恵を授かる赤ちゃん・子どもたちと、その恩恵を受けない、あるいは、受けられない赤ちゃん・子どもがいます。この格差が大きければ大きい程、そして、その格差の下位にいる赤ちゃん・子どもが多ければ多い程、社会としての歪が大きくなります。

あの「世界一貧しい大統領」、ウルグアイ※4の「ムヒカ前大統領」の国では、おそらく、拝金、拝物の勝ち組がいないのです。格差もないのでしょう。この「世界一貧しい大統領」の国では、朝飯・夕飯を食べられないという子どもが6人に1人いるでしょうか?この「世界一貧しい大統領の国」では、虐待される赤ちゃんが10日に1(人)件虐待で殺されるのでしょうか?

おそらくいないでしょう。なぜなら、この「世界一貧しい大統領の国」には、ニッポンのきらびやかな拝金、拝物の社会に代わって、貧しいけれど「楽しい、愉快な未来の夢を創る」子ども達によって、「この国は、世界一素晴らしい国」という「こころ」があるのでしょう。だから、貧しくはあるが、「みんなで朝飯・夕飯」を食べ、「みんなで赤ちゃんを抱っこする」という「共生へのふれあいコミュニティ」があるのでしょう。

約70年前の日本、特に、太平洋戦争の敗戦時には、みんな貧乏でした。家族を失い、家を失った子どもが着の身着のまま、巷に溢れていました。この時は、日本はすべて「グローバル」「競争」「成長」の敗者という負け社会の中にあり、「みんなが苦しく」、「みんなが貧乏」でした。 従って、勝ち組は一人もいませんでした。みんなが敗者で助け合いました。まさに「世界一焼け野原の貧しい国」だったのです。

その苦しく貧しい中で、国家も、地方自治体も、そして、ニッポンの全ての人々が「助け合う」という「共生社会」「共存社会」「コミュニティ社会」であったのではないだろうか。この時、ニッポンは、「世界一貧しいムヒカ前大統領の国」と同じでした。

ただ、この敗戦時には、お互い「未来に夢」があり、お互いに「心が豊か」であり、お互いが、その「未来の夢」に向かって「共生しあおう」がありました。

しかし、現代は、「グローバル」「競争」「成長」が、唯一の生きる社会なのです。グローバルで競争に勝ち、成長することが「生き残る」勝ち組なのです。「競争」なのです。「競争」によって勝ち組に属したものは、以後も勝ち続ける可能性が高く、一方、「競争」で負けると、否応なく負け組の社会の強い連鎖の中に組み込まれそこから逃げ出すことは難しく、「負け続ける可能性が高い」のです。これをマスコミや評論家は社会の「負け組」と称し、その「負け続ける事の弊害」としての「子ども達への貧困の連鎖」を心配しているのです。

少なくとも、この世に生まれ、この日本を、この地球を、そして、宇宙に向かって「未来に夢を創る赤ちゃん・子ども」には「勝ち」も「負け」も無いはずです。未来を創ろうとする赤ちゃん・子どもは、平等なのです。むしろ「日本の成長」「世界の成長」を「担う宝」なのです。すべての赤ちゃん、すべての子どもは「平等に未来の夢」を創ってもらわなければなりません。

従って、すべての赤ちゃん・子どもに次世代の日本のイノベーションの担い手として、地球のイノベーションの担い手として、そして、宇宙へのベンチャーの担い手として大人達が責任をもって育てることが、「ニッポンの未来」なのです。

「老老介護」「高齢者難民」「孤独死」「介護殺人」「漂流老人」等の「高齢化社会の歪」から脱するためにも、また、「貧困社会」という「差別」から脱するためにも、その「成長の担い手」は「赤ちゃん」であり「子ども」達です。この赤ちゃん・子どもが「未来の夢」を創り、赤ちゃん・子どもが「第3の矢」の「成長」を果たしてくれるのです。

「チャイルド・プア」は、

  1. 大人達に対して「困っている!!助けて!!」と訴える方法を知らない
  2. 子どもは、学校と家との間の「狭い世界」で生きているため、子どもの「困っている!!助けて!!」が周囲の大人でさえ気が付かない

等、大きな問題を抱えたままとなっています。

少なくとも、赤ちゃんが「おなか減った」「お乳が欲しい」子どもが「腹減った」「飯が食べたい」と誰にも相談できず、訴えることもできずに、密かに悩み苦しむ「赤ちゃんと子ども達の新しいサイレントマジョリティの社会」をニッポンの大人達はつくってはいけません。

赤ちゃんにも子どもにも憲法の言う「すべての国民は健康で最低限度の生活」を送る人権があります。だから「赤ちゃん・子どもにも人権」があるのではないでしょうか?

「グローバル」「競争」「成長」を否定するのではありません。しかし、次なる「成長」を「目指す」時、ニッポンの国家・地方自治体、企業、そして、すべてのニッポンの人々が「すべての赤ちゃん・子どもを格差なく、平等に育む」という「大人の責任社会」づくりこそが、失われた20年、そして、30年から脱却し、次代への「成長」となり、これが「第3の矢」となるのです。次代を担う「赤ちゃん・子ども」の「成長無し」に「第3の矢」はありません。これがニッポンの「成長」であり、「第3の矢」なのです。

世界で起こっている重大な事件は、テロ事件だけではありません。「介護殺人」「赤ちゃん・子どもへの虐待殺人」「学校でのいじめによる暴力と自殺」も、大きな問題です。これらは、現代の「グローバル」、「競争」、「成長の世界」で活動する豊かさやきらびやかな社会から「疎外された人々の反動」であるのかもしれません。

私は、これまで「第0次産業」こそ「次世代の産業」と提唱を継続してまいりました。「第1次産業」、「第2次産業」、「第3次産業」、そして、アメリカの「ドルによるハゲタカ・ワシ競争」の「金融産業」等に対して、「第0次産業」は、「心」「自然」「祭」「環境」「地方の古来の文化」「料理」「音楽」「アニメ・マンガ」「美術」「芸術」「ものづくり」「スポーツ」「医術」「健康長寿命」「教育」等です。

直接にドル経済の利益や生産性等、金銭的価値に結びつかないかもしれません。しかし、これらには必ず「創造」や「イノベーション」が伴うものです。ニッポンのためだけではない、「地球上の人」と「生物」にとって、素晴らしい世界を創るためには、次代のイノベーションが必要です。イノベーションを担う「未来に夢膨らませるニッポンの赤ちゃん・ニッポンの子ども(第0次産業)」が次代で躍動するのを待っているのです。

「ドルによるハゲタカ・ワシ競争」の「金融産業」と「共存」する「第0次産業」が「未来の社会」には必要不可欠だと思います。私は、この「第0次産業へのイノベーションに先鞭をつけることができる国家」は、「ニッポンの赤ちゃん、ニッポンの子ども以外にない!!」と唱えています。

さて、当財団は、いよいよ創立30周年を迎えようとしています。

これまで多くの子ども達の「奨学育英」と「科学技術」の「発展」に多くの皆様のご支援をいただき、ありがとうございました。深く感謝を申し上げます。

創立当初、京都大学岩瀬正則教授、大阪大学飯田孝道教授、大阪府大学宮武和孝教授等、多くの先生にお力添えをいただき、この30年間、皆様のご支援により、多くの青少年の「奨学育英」と「科学技術のイノベーション」に大きな成果を得られましたことを、厚くお礼申し上げます。

今後の活動は、「赤ちゃん・子ども達に関する奨学育英」にも幅を広げつつ、次代の青少年の育英に努めたいと考えております。

今後ともますます、ご指導とご支援をいただきますようによろしくお願い申し上げます。

(久米代表理事の講演より抜粋)

平成28年4月
代表理事 久米 正一

出典(参考文献)

*1 平成26年7月15日 厚生労働省
「平成25年国民生活基礎調査の概要『Ⅱ 各種世帯の所得等の状況等』」

*2 平成28年4月25日 厚生労働省
「第1回厚生労働省児童虐待防止対策推進本部の開催【資料6】児童虐待の状況等」

*3 平成28年9月16日 厚生労働省
「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第12次報告)
(社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会)(平成28年9月)『概要版』」

*4 平成28年3月25日 外務省
「国際協力 報告書資料 『VI 中南米地域 ウルグアイ(2013年)』」

代表 久米正一 プロフィール

1942年9月23日
生誕
1984年3月
工学博士 学位取得
1965年4月
八幡製鍼株式会社(現・新日本製鍼株式会社)入社
1973年4月
新日本製鉄株式会社 君津製鐵所 製銑部製銑管理課 掛長
1977年4月
新日本製鍼株式会社 君津製鍼所 製鉄企画課 掛長
1980年2月
新日本製鍼株式会社 君津製鍼所 製鉄企画課 課長
1993年4月
株式会社中山製鋼所 取締役就任
1994年3月
新日本製鐵株式会社 部長
1996年3月
日本鉄鋼協会 渡辺義助記念賞
「製鐵技術 特に装入物の高炉内挙動の解明」

主要研究経歴

1967年~1982年
高炉原料の高温特性並びに焼け落ちに関する研究
1967年~1985年
高炉軟化融着帯に関する研究
1971年~1986年
大型高炉におけるコークスの役割に関する研究
1971年~1986年
近代大型高炉の設計と拡大に関する研究
1976年~1998年
省エネルギー石油代替高炉に関する研究
1984年
工学博士 学位論文「高炉大型化に関する研究」

主な発表論文